大石浩之の数学ノート · 部活・スポーツ
3分遅れて出発したら、何分後に追いつく? 速さと待ち合わせの数学

Q. 毎分60mで歩く人の3分後に、毎分90mで出発したら、何分後に追いつく?
同じ一本道を同じ向きに、一定の速さで止まらず歩くなら、あとから出た人の出発から6分後です。先にできた180mの間隔が、1分ごとに30mずつ縮みます。追いつく場所は出発点から540m。実際の待ち合わせでは、道や休憩などの条件も確かめよう。
友だちが先に出発していた。「あとから歩き始めたら、何分で追いつけるだろう」。待ち合わせや部活の移動で気になりそうな問いです。速い人の速さだけで考えると、意外な落とし穴があります。追いかけている間も、前の人は進んでいるからです。
今回は、架空の公園にある同じ一本道を、同じ向きに歩く2人で考えます。Aさんは毎分60mで出発し、その3分後にBさんが同じ場所から毎分90mで歩き始める設定です。途中では止まらず、速さも変わらないものとします。これは人の能力の目安や実際の公園の案内ではなく、数量の関係を学ぶためのモデルです。
私、大石浩之(磐田市/不動産業)は、数学の面白さの一つは「見ているものを変えると、同じ出来事を別の形で説明できること」だと考えています。今回は2人の進んだ距離を見る方法と、2人の間の距離を見る方法を比べよう。速く計算するより、何を数えているかを言葉にすることを大切にします。
1. 時計のスタートを、どちらにそろえる?
知りたいのは、Bさんが出発してから追いつくまでの時間です。Aさんの出発からの時間ではありません。問題文に「3分後」とあると、答えにも何となく3を足したくなるかもしれません。でも、足すかどうかは、時計をいつから数えるかで決まります。
Bさんが歩き始める瞬間、Aさんはすでに3分間歩いています。毎分60mなので、60×3=180m先にいます。この180mが、はじめの2人の間の距離です。「3分の差」という時間の情報を、「180mの差」という距離の情報に置き換えたわけです。
Bさんが出発してから2分たった場面も想像してみよう。Bさんが歩いた時間は2分、Aさんが歩いた時間は5分です。2人が同じ瞬間に見える景色を比べていても、歩いた時間まで同じになるわけではありません。この区別が、これから作る式の土台になります。
今回の道は出発点から600mまで続き、そこまでは折り返さないとします。追いつく場所が600mを超えるなら、この設定の範囲では答えをそのまま使えません。道の長さも、最後に確かめる条件としてメモしておこう。
2. 同じ場所にいることを、方程式にする
このサイトの7つの段階に沿って考えます。分からなくなったら、式をいじる前に、2人がどこにいるかを図に戻してみよう。
図
Bさんの出発を「0分後」として、出発点からの位置を並べます。図の丸は同じ時刻の2人の位置です。0分後は180m離れ、3分後には間の距離が90mになり、6分後には同じ場所になります。下の図は横方向を共通の距離の目盛りにそろえています。
おく
Bさんが出発してから追いつくまでの時間をx分とする。 xにしたのは、問いが求めている時間です。Aさんが歩いた時間は、Bさんより3分長いので(x+3)分と表せます。「Aさんは遅いから3を引く」ではありません。速さとは別に、歩いていた時間の長さを比べます。
表す
道のりは「速さ×時間」です。単位はmと分にそろえています。毎分という言葉が曖昧なら、速さの復習で「1分あたりに進む距離」に戻ってみよう。
| 人 | 速さ | 時間 | 道のり |
|---|---|---|---|
| Aさん | 毎分60m | (x+3)分 | 60(x+3)m |
| Bさん | 毎分90m | x分 | 90x m |
たとえば90m/分に6分を掛けると540mです。時間の分と速さの「1分あたり」が対応して、距離になります。数字だけではなく単位も付けて読むと、距離と時間を足してしまうような取り違えに気づきやすくなります。
つなぐ
同じ出発点から同じ道を進み、追いついた瞬間には同じ場所にいるので、2人が進んだ道のりは等しい。 この理由で、60(x+3)=90xとつなぎます。等しいのは速さでも時間でもなく、出発点から進んだ距離です。何と何を等しくしたか、式の両側に言葉を添えてみよう。
解く
60(x+3)=90x
60x+180=90x
180=30x
x=6
かっこを開くときは、60をxと3の両方に掛けます。60x+3では、先に歩いた3分間を3mにしてしまいます。続いて両辺から60xを引き、両辺を30で割りました。式の変形も、同じ量の両側に同じ計算をする操作です。
確かめる
元の方程式のxに6を代入します。左辺は60×(6+3)=540、右辺は90×6=540。両辺が等しいので、6はこの方程式の解です。計算途中の式だけでなく、場面から作った元の式に戻ると、条件を保っているか確かめられます。
解けた
6分は0以上で、追いつく場所は出発点から540m。600mの道の途中なので、今回の条件に合います。したがって、Bさんが出発してから6分後に追いつきます。 Aさんの出発からなら9分後です。「6分」と「9分」は、時計の数え始めが違うだけ。答えには、どちらの出発からかを書き添えよう。
3. 「間の距離」を見ると、30の意味が分かる
式に出てきた30には、何の意味があるでしょう。1分の間にBさんは90m進み、Aさんも60m進みます。だから2人の間の距離は、1分ごとに90-60=30mずつ縮みます。Bさんが90m進んだからといって、間の距離が90m縮むわけではありません。
はじめの間隔180mを、毎分30mずつ縮めるので、180÷30=6分と考えることもできます。方程式の60x+180=90xから60xを引く操作は、2人が同じ時間に共通して進む分を取り除き、間隔を縮める分だけに目を向けることに対応しています。
一方、180÷90=2分としてしまうと、前のAさんが止まっている計算になります。2分後の位置を調べると、Aさんは60×5=300m、Bさんは90×2=180mで、まだ120m離れています。間違いを見つけたときは「公式を忘れた」と終えず、どんな場面を計算していたのかを描き直すと、直す場所が見えてきます。
2人の速さが同じなら、間隔は縮みません。Bさんのほうが遅ければ、間隔は広がります。「あとから出た人はいつか追いつく」とは限らないのです。今回のように前の人が止まらず、同じ向きに進み続ける条件を忘れずに考えよう。
4. 待ち合わせの計画では、答えの使い方も考える
実際の歩き方は、ずっと一定ではありません。道の混み具合、坂道、信号、休憩によって変わります。曲がり角で別の道へ進めば、同じ出発点からの道のりだけでは、同じ場所にいるとは言えません。今回の計算は、同じ一本道を同じ向きに、一定の速さで進むという条件の上で成り立っています。
数学が役立つのは、時刻をぴたりと言い当てる場面だけではありません。「先に出た時間」「それぞれの速さ」「途中で止まるか」のうち、何が変わると予定が変わるのかを整理できます。分からない条件があるなら、答えの精度にも限りがあります。細かい小数まで計算しても、実際の歩く速さが分からなければ、その桁まで正しいとは言えません。
私は、待ち合わせなら、追いつくために無理に速く歩くより、止まって待てる場所や合流地点を相談する使い方がよいと思います。これは数学の答えではなく、私の考えです。速さの数字で人を競わせるのではなく、互いに無理のない計画を考えるために使いたい。道路で追いつく実験をする必要はありません。紙の上の図でも、条件の違いは十分に比べられます。
5. 出発の差を変えて、見通しを試そう
最後は、道が十分長く続くとして、Aさんの出発から4分後にBさんが出発する場合を考えてみよう。速さは毎分60mと毎分90mのままです。Bさんは何分後に追いつくでしょう。今回も求めるのは、Bさんが出発してからの時間です。
考え方と答えを見る
Bさんが出発してから追いつくまでをx分とすると、60(x+4)=90x。60x+240=90xより、x=8。代入すると両辺は720で一致します。はじめの間隔240mを毎分30mずつ縮める見方でも8分です。追いつく位置は720mなので、もし道が最初の600mまでしかないなら、途中では追いつけません。「十分長い道」という条件を変えた意味はここにあります。
1分遅く出ると、追いつくまでの時間は6分から8分になりました。Aさんがさらに進んだ60mを、毎分30mの差で埋めるため、2分余計にかかるのです。答えを出す前に「長くなりそう」と予想し、その理由まで確かめると、式が出来事を説明する道具になります。
続きを考えたい人は速さの問題へ。お金の場面で等号の理由を比べるなら、文化祭の予算の記事も読んでみてください。場面は違っても、何を求め、何と何が等しいかを決める考え方はつながっています。
よくある疑問
速さを足すのではなく、引くのはなぜ?
今回は同じ向きに進み、前の人も毎分60m進むので、間隔が縮む分は90-60=30mです。向かい合って近づく場合とは、間隔の変わり方が違います。式を覚える前に、同じ1分間に2人がどちらへ何m進むかを図にしてみよう。
答えの6分に、最初の3分を足す?
問いがBさんの出発からなら6分です。Aさんの出発からなら、先に歩いた3分を足して9分です。時刻の基準が異なるので、数字だけを答えず「誰が出発してから」と書くと伝わります。
時速と分速が混ざっていたらどうする?
時間と距離の単位をそろえます。たとえば時速3.6kmは、3600mを60分で進む速さなので分速60mです。今回の式は距離をm、時間を分にそろえています。時速の数字に分をそのまま掛けないよう、単位も一緒に書いて確認しよう。
参考にした一次資料
- 文部科学省|中学校学習指導要領(平成29年告示)
第2章第3節、第1学年「A 数と式」。数量の関係を文字で表し、方程式を具体的な場面で活用する学習との対応を確認。
- 文部科学省|中学校学習指導要領解説 数学編
第3章第1節「A 数と式」。数量の関係から方程式を作り、解や解決方法を吟味する学習の解説を参照。歩く2人の場面と数値は本記事独自の設定。
資料確認日:2026-09-24。例題の金額・人数・場面は学習用の設定です。実際の価格や学校の決まりは、それぞれの条件を確認してください。